第68章 ゆかた
チラリと彼を盗み見ると彼は私の変化に気付く事無く熱心に読書に勤しんでいた
端正な顔立ちの横顔に本当に生きているのか未だに疑わしい彼
そんな彼に……服を脱げと言うのか………?
以前怪我を負った際は私自らボタンに手を掛けて何の迷いも無くシャツを脱がせたがその時は必死だったし何も考えていなかったが今考えるととんでもない勇気だ
あの時の勇気が今欲しい
私がもたもたしている内にもどんどん時間が過ぎる
1人で浴衣を着るにも時間が掛かるのに、これではお神輿が通る時間帯に間に合わなくなる……
(………照れるから恥ずかしいねん!!普通の事みたいに言えば恥ずかしくない!!!)
額に汗が滲む
「……イルミさん!浴衣を着付けるので、下着だけになって貰って良いですか?」
私は汗ばむ手を握りしめつつ堂々たる態度でゆっくりと彼を見遣った
「…………」