第7章 新年のご挨拶
翌日、新年を迎えた私は困惑していた
昨日イルミさんに謝った所まではバッチリ記憶しているのだが、それ以降の記憶が消し炭になっている
(怖い………何を仕出かしたのか怖い……っ)
恐る恐る隣を見ると寝起きのイルミさんと目が合って挨拶を交わす
(無視はされへんかったからセーフ?!)
寝起きのイルミさんはいつもはパッチリなお目目を細めていて長い髪をかき上げる仕草が何ともセクシーだ
(…………見とれてる場合じゃなかった…)
私は酔っ払うとただをこねたり、泣きながら語りだしたり、ご機嫌に歌いながら踊り出す…等(全て友人談で記憶が無い)豊富なレパートリーを持っており、果たして昨夜どのタイプの嫌がらせが炸裂したのか想像するだけで膝が大爆笑だ
どのタイプを繰り出そうとも彼が多大なる迷惑を被っていよう事は想像に難くない
私は生きてきた人生の中でこんなにも俊敏に動けた事に驚いた
私は即座に布団を抜け出して板の間に素早く土下座した
「イルミさん!昨夜は大変なご無礼を働いてしまった様な気がします!実は謝罪の後、記憶が全くございませんっ!!!すみませんでした!」
頭を下げている為彼の表情が伺えない
暫しの沈黙に息が詰まる気持ちだ
「面白かったよ」
予想外の返答に勢い良く顔を上げる
「私……何をしたんでしょうか……」
「秘密」
「殺生やわ!それは殺生やで!」
「それより今日は沙夜子の家族に会うんでしょ?」
「………はい。昼過ぎくらいに」
「ふーん」
「絶対わざと話逸らしたじゃないですか!!!」
結局何度聞いても"秘密"と返された。
極めて非常に気になるが
謝り続ける私に彼は"面白かったよ"と繰り返し呟いた