第67章 彼とゲームセンターと私
しかし、どうでも良い内容を理解する云々では無く黙って最後迄聞き、相槌を打ってくれた彼の優しさに私はいたく感激していた
そしてまたクレーンゲームに向き直る…………欲しい………
私は最後のチャンスと硬貨を投入して色々な角度から確認を重ねてボタンを押したが景品が落ちてくる事は無かった
私は心底悔しくてガラスケース越しにフィギュアを見詰めたが諦める様に溜息を付く、と
カシャンカシャンと音がして見遣れば彼が私の立ち尽くすクレーンゲームに硬貨を投入していて彼も露伴先生が欲しかったのかと驚いてしまう
……私の熱弁が響いたのだろうか………
私は場所を譲るべく立ち退こうとすると
「其のままで良い」
と言われ何故か私は彼とクレーンゲームに挟まれる形で立たされ
私の手を取るとボタンへ誘導して自身の大きな手を重ねてクレーンを操作し始めた
ピッタリと密着した身体に体格差を意識してしまい、更に重ねられた手に脳内はパニックである
そして頭に流れる旧HUNTER×HUNTER伝説のクラピカさんが苛められているエンディング"ソノマーマーデイーイー"が流れて勝手に困惑する
(えっ………これ………よく少女漫画とかで見る王道のやつですか。私の身に起きてるんですか…………!!マジで神様ありがとう………今日1日で幸せ多過ぎる………今が人生のピークなんかしら………そのままで良いんかしら………)
なんて考えてる内にゴトリと音が成り背中の温もりが離れる
「取れて良かったね」
なんて淡々とした言葉とは裏腹に最後に離れた彼の手は何処か名残惜しそうに指先が手の甲を撫でた感覚が印象的で
はい、と手渡されたフィギュアの箱を受け取り赤面する顔を箱で隠しつつ伝えたお礼はえらく小さな声になってしまった
「あの………イルミさんが欲しかったんじゃないんですか……?イルミさんが取ったし」
「別に興味無いよ。それに沙夜子が操作したんだから俺が取ったんじゃないし」
なんて言う彼に笑ってしまった
今度伝えたお礼は笑顔と共に彼にしっかり届いただろうか