第64章 私を眠らせて
瞼は鉛の様に重く意識が朦朧とする
だいたい良く考えずとも睡眠は食欲に次ぐ三大欲求であり、生物にとって必要不可欠なものなのでは無いだろうか………
だいたい"寝ない"という行為は彼にとって何のメリットがあるのだろう
そしてその期間はいつまで……?
座っていても眠ってしまいそうなので近所迷惑にならない程度の音量で EZ D○ DANCE を流して気がふれた様に踊り狂いながらも見張りのつもりなのかご丁寧に私と一緒に起きている彼を睨み付ける
鋭く視線を刺すイメージを頭に浮かべてはいるが鏡に映る自身の姿は酒のせいでパンパンに浮腫んでいてその上適当過ぎるダンスとは言い難い奇っ怪な動きは自身でもゾッとする気持ち悪さがある
そんな奴に睨み付けられれば私なら怯えて困惑の表情を浮かべるだろう
しかし流石由緒正しき血筋の男だ全く動揺を見せずに私を真っ直ぐに見据えている
(……………え、これいつまで続くの………?)
私は止まってしまうと倒れて爆睡をしてしまうだろう……
最早EZ D○ DANCE無しでは生きていけない身体になってしまっている
しかしこのまま踊り続ければ体力も持たない………
最悪死んでしまう
(………え、ちょっと待って。いつまで起きてるの?寝れやんってじわじわ寿命削ってそうやねんけど………遠回しで命の危機に瀕してる気がするんやけど………)
私は意を決して彼に問い掛ける
「………あの、私何時まで寝れないんでしょうか………」
「うーん考えて無かったなー。じゃあ今日の夜まで」
「…………夜まで………夜って何時ですか」
「19時で良いよ」
「19時…………あと20時間………」
「罰にしたら軽い方だと思うけど」
「………はい」
気が遠くなった私に"軽い"と言い放った彼に逆らうなんて恐ろしくて出来ない………
朝日に歓喜しているのかなんなのか解らないが網戸の為からリズムで響く鳩の鳴き声を聞きながら私はカーテンを開き太陽光を部屋に取り入れた
(ガキの使い○あらへんで!)チキチキ!眠ってはいけない罰ゲームはまだまだ始まったばかりだ……