第64章 私を眠らせて
意識が浮上して重たい瞼を開く
辺りを見渡せばそこは自宅だった
「………あれ?」
座椅子に座る彼は自身の声に此方へ視線を送る
「!!!」
彼の美しい肌に赤
頬が切れて流れる血に飛び起きて彼へ駆け寄り頬を挟み込む様にして強引に此方を向かせる
「どうしたんですか!怪我してる!」
「………」
彼は無表情のまま僅かに眉をピクリと反応させた
やはり痛むのだろうか……
私は急いで救急箱を引っ張り出して消毒薬を染み込ませたコットンで傷口を拭う
必死に成っていたが思いの外至近距離で真っ直ぐに見詰められて視線を逸らす様に落とせば白いシャツに滲む無数の赤が視線に飛び込みぎょっとする
「ちょ……!えっ………!!!」
私は形振り構わずシャツのボタンに手を掛けた
普段なら有り得ない行動だが怪我をして帰る事等皆無な彼がひとつやふたつ所では無い無数の傷痕を残している等普通の事では無い
私は女としてあるまじき早さでシャツを彼から剥ぎ取り素肌に触れる
ちょっと、なんて私を制止する彼の声を無視して背中迄確認し消毒と家庭で出来る最善の手当てを施した
弟が昔部活で生傷絶えなかった事で培われた手捌きを存分に発揮したのだ
そして我に返る
彼のシャツを剥ぎ取り半裸にしてベタベタと(手当ての為)身体中を触り座る彼に向かい合って跨がっている私って一体………
端から見れば変態なのでは………
何て考えが頭にちらつき彼を見遣れば彼は瞳を気だるげに細めて此方を見据えていた
胸が破れそうな程騒ぎ出して即座に飛び退く
「…………すみません」
「……別に」
チラリと表情を伺うと彼は溜息を付きつつ長い髪をかきあげていて赤面待った無しである
しかし、私を其処まで突き動かした傷の理由を聞いていない
「……あの……怪我……どうしたんですか?」
「ちょっとね」
「ちょっとって……普通の人にそんな傷付けれないですよ………もしかしてヒソカさんかクロロさん……?」
私の言葉に空気が凍り付いたのを感じた
そして甦るのは独り立ち寄ったバーでの記憶
(………そうや…私ヒソカさんのバーに行ってもうたんや………え、どうやって帰って来たんやっけ…………え………?!?!)