第62章 お弁当のヒトコマ
大通りから一本筋を入り暫く歩いた場所にある公園は今のバイトを始めた頃に良く立ち寄った場所だった
怒鳴られたりアポイントが取れず成績に伸び悩んだりした際に気分転換を兼ねて公園へ通った
角を曲がると見える黄色いベンチは私の特等席だった………のだが
そのベンチには見知った後ろ姿が腰を下ろしていて思わず走り出す
(イルミさん………!!!!)
公園へ駆け込むとチラリと此方へ視線を遣った男は大きく瞳を見開いた
「沙夜子……」
「イルミさん!!」
名を呼ぶと一層驚いた様に立ち上がる彼の隣に駆け寄り仰ぎ見た
「………どうして此処にいるの」
「バイト先、近所なんです!イルミさんは?」
「……俺も現場が近くだから」
「そっか!せっかくやしお弁当一緒に食べましょうよ!」
「うん」
落ち込み独り座っていた黄色いベンチへ大好きな彼と腰掛ける
お弁当は今朝手渡した私の手作りで中身は勿論お揃い
昼間のオフィス街の喧騒を少し離れた此処は何だか特別な場所の様に思えた