第6章 酔っぱらいと大晦日
「……イルミさん昨日の事なんですけど」
彼は黙っているが重なる視線で先を促している
本題が解ったのだろう
「とりあえず先にごめんなさい!イルミさんがいきなりおらんなるから、もう自分の世界に帰ったんかなって勘違いして……いっぱい探しても見付からんし… まだ何もしてないのにお別れも言えんとバイバイって悲しくなって… 泣いてしまいました。勘違いしてめっちゃ恥ずかしい奴ですよね。ごめんなさい」
素直にぶちまけた
イルミさんはゆっくりと瞬きをした後に
「沙夜子は馬鹿なんだね」
と言った
思わず床に視線を落としてしまう
「……はい。それは認めるけど、言われるとグサッと来ます」
(別に言わんで良いやん………イルミさん意地悪やなぁ……)
少々不貞腐れながらジト目で彼を見遣れば
ふわりと微笑む横顔が僅かに見えて目を見張る
「あ、あ、……あ」
まるで千と◯尋の神隠しのカオ◯シの様に言葉が出ない私に彼の笑顔は一瞬で消えて露骨に怪訝な顔をされたがそんな事今の私にはどうでも良い
(イルミさんっ!!イルミ様!!イルミーんっ!!!はぁ尊いっ……!)
「イルミさんって美形ですよね。カッコいいし可愛いし完璧ですよね。人類の頂点に君臨する……最早芸術作品ですよね」
普段決して口に出さない事まで言葉にしてしまうのは酔っ払いの悪い所だ
イルミさんは私が何を言っているのかさっぱり、と言う風に首を傾げた
「美形だなんて言われた事無いけど」
「えっ!そうなんですか?!こんなに見目麗しいのに?!」
「一度も無い」
「皆感覚が変なんでしょうね。………あれか…イルミさんの世界には美形が多いから見慣れてるんか……」
「美形なんてキルしか居ないよ」
「………………確かにキルア君も美形ですけど、私は黒髪美人のイルミさんはかなりの美形やと思いますよ!何ですかその瞳!その鼻!その肌っ!!あかん……話せば長くなるな……あ、もういっちょ飲み直します?」
「沙夜子、よく解らないけど落ち着いて。」
「………、はい、すみません」
興奮のあまり立ち上がりかけていた私をイルミさんはいつもの調子で諌めた