第6章 酔っぱらいと大晦日
イルミさんは時折私に視線をくれるが基本無表情でテレビを見ている
しっかり返答してくれるあたり優しいなと感じた。
番組中は全く笑わないのにコンビニのCMに抑揚なく「ははは」と笑ったりしている彼はやはりミステリアスだ
(………何が彼のツボにはまったんやろう……謎)
「イルミさんは他にどんな訓練受けたんですか?」
「突然どうしたの?」
「私はイルミさんに興味津々ですからね!元々好きやしお話し出来る内に色々聞いとかんと後々後悔しそうやし!」
「………」
イルミさんは考える様に視線を漂わせた後に
「毒物は勿論だけど、高圧電流、拷問の類いはやり尽くしたかな。後は世界史や地理、ダンスなんかもやったよ。暗殺技術は必須だけど潜入しなきゃいけない場合もあるから多ジャンルで知識が必要だしね」
こんなに彼が話すのは家に突然現れて説明をした時以来だろうか
「多ジャンル…オールマイティーにって事ですね!イルミさんやっぱり凄い!」
「殺し屋として当然だよ。じゃなきゃ殺られるのはこっちだし」
「殺られる…… 」
確かにHUNTER×HUNTERの世界では人が次から次へと死んで行く
勿論知っていたつもりだが、平和な日常に溶け込む彼を見ていてやはり想像するのは困難だった
「…… イルミさんはどれくらいこっちにいらっしゃるんですか?」
「多分一年くらい」
「一年」
長いのか短いのか解らない…… だけど少なからずまだ時間はたっぷりと有るのだと胸を撫で下ろした
そして、昨日迷惑をかけてしまった号泣の件も酒に酔っている今なら素直に話せる気がした