第60章 回転するヒトコマ
私達はパネルでオーダーしたり其々レーンから皿を取り平らげて行く
彼は物珍しそうに様々なネタを食べては少し瞳を細めたり眉をピクリと反応させたりと彼なりに楽しそうに食べている
本当はちゃんとした回らないお寿司屋さんに連れて行きたかったが彼は見掛けによらず良く食べるので破産しかね無い………
それに回転寿司の方が様々な種類のお寿司を楽しめるので好きなネタも発見出来るのでは無いかと思ったのも事実だった
彼はマグロ山かけととびこ軍艦、そして少し高い大トロを気に入り頻りにタッチパネルで追加注文している
モグモグと頬袋を膨らましつつ真剣にレーンを見詰める彼の横顔に悶えそうになる………いや、正確には静かに悶えていた
(可愛い~!!!!!!!可愛いよイルミん!!!ほっぺ突っついて良いですかマジで!!!可愛いよ可愛いよイルミん!!!!!)
彼に釘付けで暴走する脳内のせいで私は微動だにせず食事を放棄している
しかし良いのだ。食べようと思えば何時でも食べられるし
彼が回転寿司を食べている、懸命に品定めしている姿に萌える事こそ私の使命だ
等と謎の義務感に燃えている間もすっかり私の熱視線に慣れきっている彼は黙々と食べる
そして思い切り眉を潜めた
「?」
「………これ要らない」
私に差し出されたのはウニだった
「嫌いでした?」
「うん。苦手」
怪訝な表情を浮かべる彼からウニを受け取り代わりに食べる
(イルミさんでも苦手で食べたくないとかあるんやなぁ…………納豆以外で。……ウニも新鮮やったら美味しいのになぁ~………あ、今度市場行って高いの買ってこよう!)
なんて、お店に失礼な事を考えつつも私は彼の前に広がる皿に驚愕する
其所にはうどんとかぼちゃの天ぷらと赤だし、茶碗蒸しが一同に会していた
(どんだけ欲張りさんやねん…………!)
汁物とうどんを同時に欲するなんて事があるだろうか……私は無い
「………全部ちゃんと食べれますか?」
「……?うん」
彼は至極当然の様に頷くとあっという間に完食し更にレーンから何皿か寿司を取る
「〆じゃなかったんかい…………」
「?」
私は甘過ぎて食べられそうにないアイスブリュレをスプーンで掬いつつ静かにツッコむのだった