第59章 沢山の思い出を
「さぁ、川は辞めて観光しましょう!」
なんて不自然に手を叩き彼の傍へ歩み寄る私を見詰める彼の瞳には戸惑いしか浮かんでいなかった
………私はそんなにも危ない奴だっただろうか
単純に川遊びを楽しみたかっただけなのに………
少し泣いても良いだろうか。
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私達は気を取り直して古民家の様な味のある旅館が連なる通りを歩く
温泉街とはいっても穴場的なスポットで観光客はちらほら見掛ける程度で実に情緒溢れる閑静な空気に包まれている
通りはお土産屋さんが出ているでも無く様々なカフェが点在していた
私達はゆっくりと時間をかけて散策しこの建物がお洒落で可愛い、や味がある、等ポツリポツリと会話を交わしつつ楽しんだ
そして京都を訪れた際も感じたのだが彼は歴史深く染々とした町並みや閑静な雰囲気が良く似合う
隣を歩く彼が風に吹かれる姿を眺めつつ私は心底惚れ惚れする
「ねぇ」
私の方に視線を向ける事無く彼はゆっくりと髪をかき上げつつ言葉を落とす
その仕草にドキリとしつつも続きを促す無言を貫いていると
真っ直ぐと道の先を指差して
「少し寄ってかない?」
先に見えるレトロなカフェを言ってるのだろう
彼から何処かへ寄ろうと言われるのは初めての様に思う