第58章 日本の食卓
6月のある日
夕飯に野菜炒めを手早く作り豆腐の味噌汁を温める
座椅子に座る彼の前へ炊きたてのご飯と出来立てほかほかのおかずを並べるが
何とも寂しい食卓だ
「うーん」
「?」
彼は何も思っていない様で不思議そうに私を見ているが
あの日食べたヒソカさんの朝食が思い浮かび随分みすぼらしく思ってしまう
それにあのキラキラとしたマンションで座る彼は家の座椅子に座るより何倍も絵になり忘れかけていたが彼が良い所のお坊ちゃんである事を思い出し更に忍びなかった
私は冷蔵庫を覗き見てパック納豆を食卓に出す事にした
そのままだとみすぼらしいのでしっかり小皿に移して卵黄を乗せてネギを刻み食卓へ並べる
………まぁ、無いよりはマシだ
「さ、食べましょう!」
「いただきます」
「いただきます!」
彼は順調に食事を進めて納豆へ手を伸ばす
「あ、醤油入れますね!」
彼に任せると加減無くかけてしまうので私が適量をかけた
(全く世話が焼けるなぁ~)
等と思いつつも彼の事なら嬉々として行動してしまう自分が居る
「よく混ぜてから食べてください」
「うん」
彼は言われるがままに小皿を手に持ち混ぜ始める
私も彼と同じタイミングで混ぜるが彼はぎこちなく混ぜるので何だか動物の様で頬が緩んでしまう
(………まぜまぜイルミさん可愛い………!!)
彼は良く混ぜた後に引く糸を見詰めつつ一口含んで大きく瞳を見開いた
「どうですか?」
好き嫌いがはっきり判れる食材だ
彼はどうだろうかと様子を伺っていると
彼はガタリと音を立てて立ち上がり小皿を持ったまま徐にベランダに出て行く