第57章 彼となら
ヒソカさんの手が私に届く前にイルミさんが阻止し指を折ってしまったという事は頭では理解出来るのだが実際目の当たりにすると恐ろしくて身体が震えるのが解った
当の被害者は喉の奥で笑っているが全く笑えない
チラリと隣を見遣るとイルミさんの横顔はゾッとする程無感情で冷酷に何の色も映さない鋭い瞳をしていた
しかし私の視線に気が付くとまるで幼い子供をあやす様に優しい手付きで私の髪をとかし
しっかりと瞳を見据えて暖かい声色で
「大丈夫」
と言葉を落とす
彼の手は先程残忍にヒソカさんの指を折った其れと同じものとは思えない程優しくて困惑する気持ちが沸き上がるがそれすらも超越する安心感
私はえらく彼を信頼しそして深く愛しているのだと思い知る
私の感覚は少しずつ彼の影響で麻痺して行くのだろうか
そう考えると酷く恐ろしいのに彼となら……なんて考えてしまう私はもう手遅れだろう
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その後しっかりと沖縄旅行のスケジュールを話し合い
二人にOKを貰って私達はアパートに帰宅した
折れた筈のヒソカさんの指はいつの間にか元通りになっており
大丈夫なのかと聞くと
「奇術師に不可能は無いよ♥️」
なんて名言を頂き
納得した様なしない様な微妙な気持ちで帰ってきた
やはり自宅は落ち着く
広く美しいマンションは正に夢の様で憧れるが
古びて軋む床も色褪せた壁紙も
そして座椅子に座る彼の姿全てがしっくりときて
「夕飯はチゲ鍋です!」
彼があの二人と過ごすより此方を選んでくれた事が本当に嬉しかった