第56章 ベッド
見上げるとかなり近い距離に彼の顔がありその表情は寝起きからは程遠くパッチリと瞳が開いている
「あ、……う………イルミさん………何時から起きてたんですか………」
「一時間くらい前」
「……その……これはその………っ………!!!」
「はぁ……沙夜子が放してくれないから困ったよ」
「~っ…………すみません……!ほんまにすみません!!!」
「別に」
「…………」
「…………」
「あの……イルミさん………?」
てっきり直ぐ様解放されるのだとばかり思っていた私だが体制は変わらず戸惑う
「次は俺が沙夜子を放さない番?」
「っ!!!」
予想外の言葉に心臓がばくばくと音を立てて騒ぎ出し視線を何処に遣れば良いのか解らずにぎゅっと瞼を閉じていると頭上から
「なんてね」
と抑揚無く言葉を落とされ、すんなり解放される身体
未だ頭の整理が付かずに呆然としていると彼はゆっくりとした仕草で伸びをして立ち上がり部屋のドアノブへ手を掛けた
そして振り返り一言
「下、穿いてから出て来なよ」
と言い残してバタンと扉は閉まった
「…………」
(うあーっ……………!!!!!!!!!やばいやばいやばいっ………!!!!寧ろあれか、ご褒美か!?!?)
錯乱した私は暫く枕に顔を伏せて動けなかった
そして、パンツを彼の麗しい瞳に写してしまった事実に切腹したい気持ちを抱えたままそっとスウェットを穿いた
(……………ボロボロのパンツじゃなくて良かった……………)