第54章 勇者と過保護な補佐係
声を掛ければ冷静を装う彼だがHPが少なくなり画面が黄色くなると片膝を立てて針を構え臨戦態勢を取る姿は"俺が殺る"とでも言い出しそうな勢いだ
(イルミさん………静かに大興奮やな…………)
しかし敵は画面の中であり
液晶に穴が開くだけなので
「イルミさん………ゲームですよ」
「…………」
声を掛けるとあからさまに平静を装う……可愛い
そして本を手に持ち読んでいる風に見せ掛けて彼の瞳は真っ直ぐにテレビ画面を捉えている
ページが全く進まないのが何よりの証拠だ
私はと言うと新たな敵が次々現れて画面が真っ暗になり、また翌日からのスタートになってしまった
「沙夜子の分身死んじゃったね」
「………」
なんて意地悪な視線を受けるが私はめげない