第54章 勇者と過保護な補佐係
6月のとある休日
何処へ行くでも無くザアザアと降り頻る雨の音を聞きながら
ひとつしか無いテレビを独占しゲームに興じていた
名作"ドラゴンク○スト天空の花嫁"
毎年この季節になると押し入れから引っ張り出して1からプレイする梅雨の醍醐味的代物だ
誰でも一度は聞いた事のあるオープニング曲や効果音にこれから繰り広げられる冒険にワクワクする
彼は私が突然ゲームを始めた事で読んでいた本をちゃぶ台に伏せた
「………何これ」
「ゲームです!日本国民なら誰でも知ってる有名なゲームなんですよ!私は今から冒険に旅立ちます」
「冒険?ゲームするのに?」
「はい。私は今から勇者ですから」
「勇者?……頭おかしくなったの」
「名前はヨシ○コですよね。勇者といえばそうですよね」
「何が」
「ゲームキャラの名前ですよ!これからゲーム世界で私の分身になります。」
「……ミルみたい」
「………弟さんとお話が合いそうで何よりです」
ヨシ○コが誕生し船上から始まる物語は可愛らしい幼馴染のビアン○と出会い夜の○ヌール城まで進んでいた
隣で食い入る様に見ている彼は次々進むストーリーに余程夢中な様で敵が現れる度に針を構える
「イルミさん………」