第53章 奇妙なヒトコマ
「大丈夫?」
人間本当に恐怖すると声も出ないとは事実の様だ
私を覗き込む人物は確かに彼の声を発しているのだが
目の前に見える人物はそっくりそのまま私の顔をしていたのだ
自分自身が同じ空間に二人存在すると言うのはこんなにも不気味で鳥肌が止まらない物なのだろうか
私はごくりと唾を飲み込み恐る恐る言葉を紡ぐ
「………イルミさん………ですよね………?」
「うん」
至極当然の事の様に頷く彼に先程迄の自分が嘘の様に捲し立てる
「何で私の顔なんですか!何してるんですか!アホなんちゃうん!?びびったやん!!あかん、めっちゃ怖い!!!!とりあえず早く戻って!!!!………ハックシュンッ!!!!!!」
びしょ濡れに成ったが為に致し方無いのだが私の…………いや、彼の顔にくしゃみを浴びせる事で私の台詞は途切れる
「…………」
「…………」
暫しの沈黙の中
私を見詰める私の瞳はこんな表情を出来るのかと戸惑う程無表情でまたぞわりと鳥肌が立つ