第52章 程々が一番
「そうや!どっちがいっぱい取れるか競争しましょう!」
「…………ほんと沙夜子は学習しないよね。俺に勝とうなんて無謀でしょ」
「……かっちーん。私が勝つかもしれないでしょ!」
「……まぁ、沙夜子がやりたいなら良いけど」
「やります!あれですよ!パック以上に取ったら駄目ですからね!」
「良いよ」
「スタート!」
私は叫ぶなり目の前に狙いを付けていた大粒で艶々と綺麗な苺を収穫する
コロリとパックに転がる苺を見届けて次に取り掛かろうとしていると肩をぽんぽんと叩かれて振り返ればパックいっぱいに苺を詰めた彼が佇んでいた
「びっくりしたっ!!はやっ!!」
「沙夜子の負け」
私が驚愕していると隣の列でいちご狩りを楽しんでいたグループが声を上げる
…………間違い無く彼の仕業だ
突然苺が消えた、怖い、と口々に叫ぶ彼女達は私なんかよりも何倍も驚いているだろう
目の前で苺が忽然と消えればさぞ驚くだろうし彼女達のリアクションは当たり前だ