第51章 ひとつのスマホ
「俺が近いと赤くなるの?」
彼は今の状況を楽しむ様にくりっと首を傾げて白々しく瞳を細める
「もしかして意識してる……とか」
一際大きく跳ねる心臓
彼に見詰められるだけでも胸一杯になるのにこの至近距離でそんな事を言われてはバクバクと脈打つ心音が身体中を駆け巡る
私は必死に彼を見据え
「イルミさんは意地悪です……」
真っ赤に染まった顔で必死に返した
彼は尚も白々しく、意地悪?なんて漏らしたが追及される事は無く
「まぁ良いや。早く決めようよ」
と、何時もの調子で声を掛けられやっと解放された
未だ肩と肩は触れ合ったままだが先程迄と比べれば幾分も気楽な距離に思えた
私は落ち着き無く高鳴る心臓を抑えてひとつのスマホを眺めながら目ぼしい観光地を絞っていった
結果旅行の工程は4泊5日という長いものに成ってしまったが
「少し楽しみになったよ」
という彼の言葉に浮かされて国内にしては長期な旅行のスケジュール表を嬉々として作り上げたのだった