第51章 ひとつのスマホ
「行き先、決めないの?」
特に耳元で囁かれた訳でも無いのにびくりと跳ねた肩は彼の肩と触れ合ってしまっている為にバレバレだろう
答える事も動く事も出来ずに赤い顔を隠す様に俯くと大きな手によって顎を掬われ強制的に彼の方へ向かされる
「どうしたの?」
と、口では言っているもののその瞳は全てを見透かした様に細められ
「また熱?」
イタズラに触れた彼の手は私の頬を包み込み不適な色を湛えた瞳に捉えられて動けぬまま彼は顔をぐっと近付けキスを想像させる距離で額をくっ付けた
「熱は無いみたいだけど。真っ赤だよ?」
確実に確信犯だ
額と額が離れた後にも拳ひとつ分程の距離を保ち解りきった事を聞いて来る
「………イルミさんが近いから……」
振り絞る様に発した声は思いの外小さく彼にしか届かない