第5章 外出先の彼は美形を超える
(早とちりでイルミさんが帰ったと思ったから…って恥ずかし過ぎて死にそう……)
何も言えずに目線を泳がす
イルミさんは、ふぅっと溜息を付いて姿勢を正し抑揚の無い声で
「言いたく無いなら良いんだけど」
と言った
「……言いたく無いと言うか、言いにくいんです。もう少し落ち着いてから話しても良いですか?」
思い切って隣の彼を見ると、 別に良いよ と返してくれてホッとした
そしてやはりその視線の先には大量の買い物袋が目に映った
「……イルミさんその袋何ですか?」
「何だか良くわからないけど女の人達が買ってくれた」
「は!?えっ…?!」
どういう事だろう……理解に困難を極める私に対してイルミさんは冷静に袋の中身を見せながら説明する
彼は例の歯ブラシをかごに入れた後私が動かなくなったので独り店内を散策していた、すると沢山の女性から声を掛けられ受け答えする内に必要な物を買い揃えて貰った様だった
驚愕である……。
彼はただ歩いていただけだと言う
探しても見当たら無かったのは大量の購入物から察するに行き違い入れ違いしていたのだろう…
しかしそれよりも彼の異性の惹き付け具合に戦慄を超えて最早感心すらしてしまう
改めて店内を見渡せば失礼ながら彼の美貌は常軌を逸していた
一般人には無い何とも言えない雰囲気や雑誌から飛び出して来た様な佇まい
女性だけで無く同性すらも彼を見ていた。
(単にHUNTER×HUNTERファンかも知らんけど…… )
それと同時に"隣のあのブス女"と言われている様な女性からの視線に心臓がギュッとなって再び汗が垂れた
私は確信した
彼は美形では無い
普通の美形が霞む程の超絶美形なのだと
「……イルミさん」
私の呼び掛けにくりっと首を傾げるイルミさんにとにかく此所を離れて寝具を買いに行こうと伝えた
揃っていないのは寝具だけ、くらいの買い揃えられ様に頭の片隅で
(下着選んでドキドキしたり、自分好みのお洋服を進めて試着してもらったり………ドキドキワクワクイベント強制終了やん……楽しみやったのに)
なんて不貞腐れながらも無事寝具を購入して店を後にした
大量の荷物を全て独りで持つイルミさんに荷物を分けてもらう様に提案したが「軽いから平気」と言われてしまった
(ゾルディックの門と比べられたら何でも羽の様な軽さやろうな……)