第48章 我が儘1つ
翌日目を覚まし、まだまだ頭がぼーっとする体を無理矢理起こすと何かが落ちた小さな衝撃が身体に走った
辺りを見渡すと手元に濡れたタオルが転がっていて彼が看病してくれていた痕跡に挨拶と共にお礼を伝える
それだけ心配してくれていたのだと実感すると共に胸が暖かくなった
彼は何時もの定位置で何故か私が購入していた女性用ファッション誌を凝視している
「………何見てるんですか?」
「体調は?」
「……まだ本調子じゃないです」
「今日もゆっくりしてなよ」
「ありがとうございます。何見てるんですか?」
「……これ」
立ち上がり私の前にゆっくりと歩みを進める
其れだけの事なのに以前見た願望的な夢のせいでドキリと心臓が跳ね上がり微熱のせいなのか頬が酷く熱い
未だ布団で彼を見詰める私の直ぐ隣へ腰を下ろして私に向かい雑誌が広げられる
「これ何?」
彼が指差すページを見るとモデルの男女がデートを再現している特集ページでその男女は所謂ふわふわのかき氷を食べていた
「あーかき氷ですね」
「………氷がふわふわなの?」
「私も食べた事無いですけど……そうらしいです」
「ふーん」
そこには"牛乳を凍らせたミルク氷をふわふわに削り、氷自体の味も楽しんでしまう台湾かき氷"と書かれており彼は説明文を読んで興味を示した様だった
「かき氷は夏の風物詩です!また食べに行きましょう!」
「うん」
彼はその後も私の寝転ぶ布団の隣で雑誌を捲っていてどんなページを見ているのか解らないが目まぐるしく動く視線を眺めていると時折目が合う