第45章 夢幻
瞼を開くと先程迄至近距離にいた筈の彼が居らず部屋を見渡せば
座椅子に座ったまま此方を見ていた彼と目が合った
「おはよう」
「…………おはようございます」
(夢……………。え、夢…………まじか…………欲求不満かよ………)
「随分大きな寝言だったね。全く………沙夜子は寝言でも騒がしいんだから」
「あはは…………」
(ヤバい。完全に聞かれてる……………!!!!どうする!!!!どうする私!!!!何処まで聞かれたッ……!!!)
「どうせあれでしょ。うなされてたし俺に殺される夢でも見てたんじゃないの」
「………はい」
咄嗟に嘘を付き胸を撫で下ろす
夢の全貌が彼に知られて居なくて心底良かった……
もし知れていたら私は気まず過ぎて勝手ながら実家に帰っていただろう
__________"
すっかり安心した様にキッチンで夕食の支度を始めた彼女の背中に溜息を漏らす
(なんてね………。あんな声で呼ばれるなんて参ったな。…………全くどんな夢見てたんだか………)
願わくばあの映画の様に自身もハッピーエンドを
なんて考えが頭を掠めて自傷を含めて歪んだ笑みを浮かべる
(…………どうしたって離れなくちゃいけないのに何考えてるんだろ………)