第45章 夢幻
5月6日
翌日、最後の祝日は何処にも外出せずダラダラと過ごしていた
取り立ててする事も無くお互いに会話をするわけでも無い
お互いに好きな様に過ごしている
私は雑誌を捲りつつ特に理由も無く座椅子に座り分厚い本に視線を落とす彼をぼーっと見詰めてみた
と彼も此方を見遣り視線がぶつかる
暫しの沈黙の中彼は気だるげに本を床に置くとゆっくりとした所作で立ち上がり私の直ぐ隣にごろりと寝転がった
「……?」
不思議に思い見詰め続けていると天井を見ていた彼だが
寝返りをうって肘を立て頭を支え私の至近距離で私の開いていた雑誌を同じ様に覗き始めた
「…………」
「…………」
(パニックなんですけど。戸惑いなんですけど。いきなりどうしたイルミさん………)
私はぐっと近付いた距離にいたたまれず視線を雑誌に落とした
バクバクと音を立てて動き出す心臓に落ち着けと言い聞かせるが一向に治まらず
こめかみにじわりと汗が滲む
(ちょっと何か言うてやッ……!気まずいやん……)
部屋に響くのはページを捲る紙の擦れた音だけ