第44章 私とクジラ
そして最後に自然の海をそのままの美しい景観を背景に先程餌やりをした鯨達が繰り広げるショーを見た
イルカより体格が大きい鯨だが、まだまだショーは練習中といった様子で指示を聞かずに自由に泳いだりしている様子とフォローするアナウンスが面白かった
慣れた様子で拍手を送る彼に浮かぶ笑みを噛み殺しつつ私達はくじらの博物館を後にした
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帰宅した私達はテレビ番組を見ながら鍋を囲んでいる
勿論野菜は道の駅で今朝購入した新鮮野菜で醤油ニンニクの手作り出汁とホルモンのジューシーな油が合わさってかなり美味しく出来た
彼のおかわりの回数が多い所を見るとかなり気に入ってくれた様で嬉しくなる
「次は塩とか鶏ガラ出汁とかで鍋しましょうか!」
「うん。色々食べてみたい」
「イルミさん辛いの好きやからチゲ鍋とかも良いかもしれませんね!」
「辛い鍋なの?」
「はい、真っ赤な出汁の鍋です」
「ふーん」
「あ、忘れへん内に写メ送っときますね!」
「うん」
外出の度に増える写メは必ず彼に送っていた
動物園に行った際に写真頂戴と言われたのが自分の中でも非常に嬉しかったのだ
アプリ内でアルバムを作り順調に送る中、ピロンと着信音が鳴り携帯を見れば画面には【イルミさんが画像を送信しました】と表示されていた
「?」
彼が自ら写メを撮っていた記憶が一切無く不思議に思ってページを開くと画面に写し出されたのは心底楽しそうに笑顔で鯨に餌をやる私が写っていてドキリと心臓がはね上がった
「なんで!?」
「別に。気分」
「………気分……」
どんな気分なのかは想像しても全く解らないが彼が自ら私に向けてシャッターを切ってくれた事が嬉しくて露骨に眉を潜める彼を他所に私は暫く変な笑い声をあげ続けた