第44章 私とクジラ
私は家族連れでちびっこ達が群がる水槽へ右手を浸けてドキドキしながらエイの背中に触れる
指先にはプニュプニュスベスベな感覚が伝わり小さく声を上げた
本当はもっと触っていたかったが待っているちびっこ達に悪いので水槽を後にした
「イルミさんは触らなくて大丈夫ですか?」
「うん。別に良いや」
私とは違い彼は余り海洋生物に興味が薄い様だ
今まさに足を踏み入れた水族館だが私ばかり楽しんでいる様で小さな不安が浮かぶ
館内は薄暗くドーム状水槽の青い光りがゆらゆらと辺りを照らす中アルビノで真っ白のバンドウイルカが頭上を泳ぐ
只でさえ水中で滑らかに泳ぐイルカの姿は綺麗なのだ
白い身体で気持ち良さ気に泳ぐバンドウイルカは美しく溜息が漏れた
彼はというと心配とは裏腹に真っ直ぐに水槽を見上げてポツリと綺麗だね、と呟きを落とした
青く光る水面に照らされて佇む彼は其所に存在しているのか疑わしい程幻想的で彼の方が余程綺麗だと思った
その後小さな水族館を回るのにそこまで時間を有する事は無く
次いで資料館へ入館して私は目を疑った