第44章 私とクジラ
「イルカショー始まる!急ぎましょう」
「………」
私にされるがままに黙って着いて来てくれる彼は優しい
ショーの会場は既に人で溢れており辛うじて取れた席はプールから遠く離れた席だった
しかしちらほらと集まる観客で立ち見客まで出ているので私達は運が良かった
「……座れて良かった」
「人気なんだね」
「ショー嫌いな人は居てないですよ!多分!」
「多分」
彼と会話している内にポップな音楽が流れ出しショーの開始が近い事を知らせる
徐にプールへやって来た飼育員達の手拍子に合わせて観客も一体となり手拍子をする光景に彼は戸惑っている様子でキョロキョロと辺りを見渡していた
軽快なアナウンスと共に可愛らしいイルカが元気良く水飛沫を上げて高くジャンプすると観客から歓声が上がり拍手が起こる
私も例に漏れずに歓声を上げて拍手を送りつつ彼に笑顔を向ければ彼もつられた様にポツリポツリと拍手をしていた
無表情な彼とは不釣り合いな仕草にほっこりしてしまう
軽々と吊り上げられたボールに向かって高く飛ぶパフォーマンスは本当に凄くてお利口なイルカ達に感動した
「凄かったね」
「はい!めっちゃ可愛かったしやっぱり凄いですよね!」
酷く感心した様子の彼に自然と笑みが溢れた
「鯨のショーも見れるみたいですよ!」
「へぇ」