第44章 私とクジラ
5月4日
翌日目覚めると隣に彼は居らず暫くして運転席へ戻って来た
右手には歯ブラシセットが握られている
「おはよ」
「おはようございます」
「先に歯磨き済ませたよ」
「……はい、私も行ってきます」
(………めっちゃ偉いやん)
私も道の駅の御手洗いで洗顔や歯磨きを済ませて車へ戻りメイクを始める
と、じっと此方に向けられる視線
(…………やりにくいわ………)
メイクをしている姿を凝視されるのは変に緊張する
「……どうしました」
「それ、しなくても良いんじゃないの」
「いえいえ、さすがにこの年で素っぴんはキツいです」
「大して変わらないじゃない」
「……変わりますよ」
「別に良いけどさ」
彼はそう言ってナビでついているテレビ番組へ視線を移動させ、私は手早く身支度を整えた
______________"
「白菜でか!」
折角なので二人で道の駅を見て回るとスーパーに並ぶ野菜とは比べ物にならないくらい新鮮で大きな野菜が沢山並んでいて思わず声を上げ、買い物篭に白菜とネギを入れる
(……夕食は鍋で決まりやな……)
外出から帰った後に手の込んだ料理を作る労力はなかなかのものだと思う