第43章 他愛ない会話
「さすがに夜はちょっと寒いですね。毛布持ってくれば良かったです」
「暖房かけようか」
言うなり上体を起こした彼に慌てて声を上げる
「大丈夫です大丈夫です!!」
「そう」
彼はモソモソと音を立てて再び布団へ潜り込む
ふと窓を見ると外気との温度差で白く曇っていた
私はおもむろに手を伸ばして小さくウサギの落書きをする
「イルミさん、これ何でしょう!」
「兎」
「じゃあこれは!」
「熊」
彼も手を伸ばして窓に絵を描き始める
「じゃあこれは」
「………えっと……」
私の目に写るのはやはり精神を抉る様な不安定なタッチで描かれた動物らしき何かで即答出来ずに言い淀む
私がそうしてる内に水滴が垂れて動物らしきものが涙を流している様で一層不気味だ
「…………えっと………猫?」
「ペンギン」
「ペンギンでしたか………」
じっと見詰めてみるがどう頑張ったってペンギンには見え無かった
私達はそんな他愛ない会話を数回繰り返した後に眠った