第4章 歯ブラシ
家を後にした私達は
徒歩では少し距離があり交通機関を使うには微妙な距離に在るドンキ◯ーテを目指す事にした
その他、交通機関を使わない範囲に適当な場所が無いというのも理由の一つだ
「……自転車…乗った事あります…?」
「ジテンシャ?何それ」
自転車を知らないイルミさんに愛車を紹介して簡単な説明をしていたのだが
何処か楽しそうにソワソワとし始めたイルミさんを見て
取り敢えず乗りましょう、となった
________"
彼は今私の後ろに乗っている
傍目から見れば乗り位置に違和感があるかもしれないが
今日まで自転車を知らなかった彼に運転を任せる程命知らずでは無い
(バランス感覚良さそうやから普通に私より乗りこなしそうやけど……)
最初こそ私の横っ腹辺りに手を添えて私を非常にドキドキさせたイルミさんだったが、それもほんの一時の事だった
走り出してから「もっと早く走れないの?」とか「あれは何?」と、質問を繰り返すイルミさんはどことなく無邪気で私まで楽しくなって上機嫌で答えたりした
程無くして到着した安売りの殿堂
彼は入店して直ぐのドラッグストアーのコーナーで立ち止まった
私は完全にクエスチョンマークだ
「何か気になります?」
「歯ブラシ。昨日は沙夜子のを使ったんだけど、あの平らなベッドをシェアするのも嫌なくらいだし、嫌でしょ?」
私の全身の細胞という細胞に衝撃が走った。
今朝起きてから使用した歯ブラシはイルミさんの使用済み……
(間接キスっすか………ウオオオオオオオオオッ!!!!!!!)
身体中から炎でも上がるのでは無いかというくらいに体温を上昇させながらも
イルミさんの発言に引っ掛かる点があった
間抜けな顔で立ち尽くしているであろう私を不思議そうに見詰めている彼
暫しの間を空けて
「嫌なんじゃなくて乙女の恥じらいです!」
と鼻息荒く伝えておいた
彼はどうやら私が彼とシェアするのが嫌だから、寝具を購入すると思っていたのだろう。しかし私の気持ちは全く違う。寧ろご褒美だし、感謝を伝えながら地面に頭を擦り付けたい程の気分なのだ。
ただ、私の様な異世界人の平凡女が彼に本気で恋する等もっての他な上、一時的に身を隠すだけの彼にとって迷惑になろう事など明らかだ