第42章 釣り上げましょう
車に乗り込む前に口酸っぱく、標識を見て欲しい、制限速度を守って欲しい、と言った甲斐があり彼は至って安全運転をしてくれている
アニメで見た彼の運転は急いでいたにせよ猛スピードで車を飛ばし豪快にドリフトを決めていた
運転テクニックは確かなのだろうが此方であんな運転をされてはパトカーが何台駆り出されるか解ったものじゃないし車酔いで吐瀉物を撒き散らしてしまうだろう
そうなればきっと害虫を見るような蔑みの眼差しを向けられるのだろう………それはそれで有り。なんて変質的な事を考えているとは夢にも思うまい……
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二時間程車を走らせてやって来たのは和歌山県の海辺
私はイルミさんと釣を楽しみにやって来たのだ
車を降りて深呼吸すれば潮の香りが胸一杯に広がった
「うえ"っ……」
そして盛大にえずいた
実の所潮の香りは独特過ぎて苦手だ。忘れていた。
「え」
短く声を上げて私をガン見する彼は怪訝な表情を浮かべているので軌道修正をはかる
「あはは……なんちゃってー……」
「何が」
(確かに。)
鋭いツッコミだ
彼もなかなかに関西色に染まってきたのでは無いだろうか