第41章 耳と歯形
目は口ほどに物を言うとは良く言ったものだ
普段ポーカーフェイスの彼があまりにも怒りに満ちた瞳を向けていたからだ
「ヒソカと会ったんでしょ。何されたの?」
今朝耳にキスをされた事を思い出し咄嗟に耳元に手をやれば
身体をぴったり密着させられ私は壁と逞しく鍛え上げられた身体に挟まれる
私の仕草を見逃さなかった彼は眼を細めて鋭い視線で続ける
「言えない事なの?」
その声色には失望や怒りが含まれている様で
喉から絞り出す様に小さな言葉を紡ぐ
「耳にキスされました」
さらさらと頬を擽る彼の長く美しい髪の感覚だけが酷くリアルで他の出来事に頭が付いていけない
「イルミさ「黙って」
言葉を発する事も許されず押し黙ると
彼は私を解放し私の身長に合わせて屈み込み無理矢理に横を向かせると耳朶に唇を寄せた
キスと言うには余りにも荒々しく歯を立てて噛み付かれピリピリと痛みを感じ眉を潜める
「いっっ………!」
プツリと嫌に小気味良い音が耳元で響き皮膚から流れ出る血液の感覚に嫌が応でも涙が浮かんだ
「イルミさんっ………!」
「煩い」
会話もままならず低く囁かれば紡ぐ言葉も出て来ない
耳朶を口に含まれたままに流れる血液を彼の舌が絡め取る様に艶かしく動かされ厭らしく水音が響く
ぞわぞわと背中から沸き上がる快楽にも似た感覚に目眩を覚えた