第39章 広がるのは美形の世界
私は今怯え上がっている
一人で帰宅していたなら即通報レベルだ
私達は嵐山の綺麗な竹林を散策して沢山写真で思い出を残し、帰宅してから二人で食べるお土産を買い実に楽しく帰路に付いたのだが
アパートの部屋を前に室内の照明が点いている事に気が付いて聞き耳を立てた所無人の筈の自室から物音が聞こえたのだ
これが怯えずにいられようか……
「………イルミさん、泥棒おる……」
絞り出す様にゆっくりと振り返れば
「俺が開くから後ろにさがってて」
頼もしい言葉が耳に入る
「……えっ……大丈夫ですか?」
「うん」
彼は私を力強く背後へ引くと何処から取り出したのか後ろ手に針を構えて玄関を開き瞬時にそれを投げた
私は彼の背中しか見えず短い悲鳴を上げる
(………あかん………イルミさん人殺してもうた………)
頭が真っ白になって動けずにいると
彼はお構い無くズンズン家の中へ進んで行く
彼が本気で止めを刺す前に止めなければ…
考えるが先か動くが先か、後を追って駆け込もうと一歩踏み出した瞬間に私の身体は何かに引っ張られた様に宙を舞った
「ぎゃあああああーーっ!!!!」
ぎゅっと瞼を閉じて身構えているとボスッと鈍い衝撃が伝わりそっと目を開くと彼の立ち姿が写って頭に疑問符が浮かぶ
(………私を抱き止めたのは誰ですか………?)
恐る恐る後ろを振り返ればニヤニヤと口元を吊り上げた切れ長な目に見下げられて声にならない悲鳴を上げた