第38章 寂しさと愛しさ
緊張の面持ちで控え室へ入れば
ばっちり袴を着こなして腰に刀を携えた彼と目が合った
彼は元々存在感があり只でさえ美形で美しいのだ
私は膝から崩れ落ちそうな程の衝撃を受けて立ち尽くした
(やばい………めっちゃカッコいい………)
醸し出す凛とした雰囲気と和服のキッチリとした出で立ちが相まって彼は軽く美形を越える
目線を外せず見惚れてしまう私に
「綺麗だね」
なんて嬉しい言葉を掛けてくれるものだから恥ずかしいやら照れるやらで大変だ
「あ、ありがとうございます」
普段着なれない着物は重くおずおずと隣に座る
「イルミさん似合い過ぎですよ。びびります」
「沙夜子こそ似合ってるじゃん」
「イルミさん程じゃないです」
「綺麗だよ」
私は嬉しくて恥ずかしくて俯く事しか出来ず指先で着物の袖を遊んで過ごした
撮影はカメラマンさんに指示されるままにポーズを決めるのが大変だったがあっという間に夢の様な時間は過ぎた
その後化粧を落としたり私服に着替えたりとどっと疲れてしまったが出来上がったアルバムとCD-Rを受け取るとテンションが上がった
捲ると中にはえらく至近距離で見詰め合ったり腰を引き寄せられたりしている私の姿が写っていた
(うわぁ………恥ずかし……こんなに近かったんや………)
撮影中はポージングに夢中になっていたが俯瞰から見るとカップルプランと言うだけあってやたらとイチャイチャしていて
「よく撮れてるね」
と淡々と言って除ける彼とは裏腹に照れ臭くてそれ以上ページを捲る事は出来なかった