第38章 寂しさと愛しさ
彼の真意は解らないが
彼の気持ちを拒否した形のままでは嫌だった
無理強いはせずにあっさりと引いた彼にズキリと胸が痛んだのも事実だ
「一緒に入りましょう!」
「え」
「嫌な事はしないんですよね」
「うん」
「別に一緒に入るのが嫌な訳じゃないんです」
「……」
「恥ずかしいから嫌やって言ったんです」
「うん」
「だから、一緒に入りましょう」
「うん」
彼は廊下で、私は脱衣室で浴衣を脱ぎ捨ててタオルを巻いて
一緒に湯船に浸かった
「露天風呂!好きですか?」
「うん。気持ち良いよね」
「ですよね、私も露天風呂好きです」
立ち込める湯気で霞む視界で彼を見る彼も此方を見ていて目が合った
普段の調子で話していた私だが一気に心拍数が上がる
「沙夜子」
「はい」
「沙夜子、ハグしても良い?」
「………はい」
チャプチャプと水音を立てて彼が近付く気配がして伸びてきた力強い腕に抱き寄せられ彼との距離がぐっと近付く
白く透明感のある肌に直に触れて自分の心音が煩いくらいに騒いだ
「ねぇ沙夜子」
「はい」
「沙夜子は俺が帰ったら寂しい?」
答えの解りきった質問だった
「……寂しくない訳無いでしょ」
「……そう」
彼は何処か悲し気に呟きを落とし、それっきり黙ってしまった
私も彼に寄り添ったまま今のこの時が一瞬でも長く続けば何て考えていた