第38章 寂しさと愛しさ
私は彼に横抱きにされて何故か脱衣室に運ばれていた
「…え?!」
パニックである
「何ですか!」
彼が何を考えているのか解らず戸惑う
「せっかくだし一緒に入ろうよ」
「は!?無理!恥ずかしいっ!!」
彼は何を言っているのだろうか
彼は知らないが私は彼に恋心を抱いている
只でさえ爆死しそうな事が立て続けに起きたのに混浴なんてキャパオーバーだ
先程の彼の雰囲気から愛の営み的な事が頭にちらついてしまい思わず泣きそうになった
みるみる内に視界が潤み出す
「………イルミさん何考えてるかわからん……いつもと違う……」
自分でも涙声なのが解った
彼に愛の言葉を囁かれた事等無い
気持ちを伝えた事も無い
だとするならば彼の先程の行動は男性の本能から来るもので気持ちもなく求められている可能性だって否めないと考えたら涙が流れた
彼にそっと下ろされて向き合う
「沙夜子ごめん」
淡々とした声色に見上げると普段の彼と目が合って指先で涙を拭われる
「普段は猫被ってるだけだよ。俺だって男だし色々我慢してる」
思いもしなかった言葉にただ唖然と見詰める事しか出来ない
「だけど沙夜子の嫌がる事はしないよ。飲み直そうか」
先程迄の妖艶な雰囲気は無く私をあやす様にそっと頭を撫でられて考え込んでしまった