第37章 宿の男女
「上がったよ」
「うへ……!めっちゃ似合ってる!!」
ヘロヘロに出来上がった私の前に現れた彼は完璧に浴衣を着こなし
開いた胸元から覗く肌と濡れた長髪が非常に生々しく妖艶な雰囲気を纏っている
私は急に緊張してしまい直ぐ様露天風呂へ逃げた
(あれは反則………)
ドキドキと高鳴る胸と酒で火照った身体が外気に冷やされて落ち着きを取り戻す
(大丈夫………意識せんと何時も通り………大丈夫。落ち着け……)
心の中で何度も繰り返した甲斐があり大分普段を取り戻してせっかくなので長湯をした
部屋に戻ると酒をガンガン煽る彼に目が止まる
彼が自らお酒を飲む事は今までに無かった
驚きと僅かな違和感からかける言葉が見付からず名前を呼んでみる
ゆっくりとした仕草でまだ水分を含んだ髪をかき上げる彼と目が合って脈が早まるのが解った
纏う雰囲気が普段と違い何処か不適な目をした彼に近付く事も憚られて立ち尽くす
「座らないの?」
「え、あ、座ります」