第32章 花見で一杯
そんな彼はというと現場仕事から待ち合わせ場所だったコンビニに直行してくれたので作業着のまま軽く髪を纏めた姿でゴクゴクと喉を鳴らして缶ビールを傾けている
普段綺麗な手だな、なんて見ている彼の手だが逆剥けなんかが出来ていて毎日現場へ出向いて力仕事をこなしている事を物語っていた
「今日も1日お疲れ様ですね、イルミさん」
「沙夜子もね」
「私はオフィスワークですから」
「俺には出来ない仕事だよ」
「私だって力仕事なんかできませんよ」
お互いに違う分野で働いている事に改めて感慨深さを感じた
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花見を始めて早くも三時間が過ぎた
アルコールが入った事で火照った頬に夜風が心地良い
「イルミさーん桜綺麗ですね」
「そうだね」
「ほんまに綺麗……」
ヒラヒラと風に揺られて舞う花弁が彼の綺麗な黒髪に落ちる
桜を見上げる彼の横顔は何処か儚げで今にも消えてしまいそうに見えて思わず伸ばした手で彼の髪へ触れた