第30章 四月馬鹿で自覚する
4月1日、日曜日
エイプリルフールである
私は彼にとても馬鹿げた嘘を用意してあった
"妊娠しました"
である。
勿論私に恋人が居ない事は
イルミさんが彼氏役を担ってくれているので解っているだろうし
イルミさんと出会ってから友人と外出しておらず電話で済ませているし
私が個人で家を出るのは実家かアルバイトである
従って本当に下らない
考えれば直ぐにバレてしまう嘘だ
朝食の時点でジャブを仕掛ける
ジャーを開いた瞬間に吐き気を催すというやつだ
私は脳内で描いた通り「うっ」と言いながら口元に手を当てて踞る
彼の反応はどうだろう……なんて内心ニヤニヤしながら俯いていると
「どうしたの」
気配も無く至近距離で声がした
私が踞って数秒で素早い反応を見せる彼に
「………いえ、ちょっと」と
笑わないように具合の悪そうな声で答える
瞬間、ふわりと身体が宙に浮いた
「!?!?」
「具合悪いの?」
いつかの様にお姫様抱っこをされて戸惑うがまだ肝心の嘘をついていない
私は意を決して
「…………実は……妊娠してるんです………」
笑いをこらえて震えた声は妙にリアルになった