第2章 お金と条件
私は今朝から自分の事ばかり考えていっぱいいっぱいになっていたが、良く良く考えれば異世界へ身を隠さざるを得なくなった彼の方が不安だったのではないだろうか…
新しい環境、慣れない土地に文字…最初に出した麦茶だってそうだった。夕飯の時、何気無く注いでしまっていたし、彼も表情を変えずに飲み干していた。
だけど、最初は僅かな表情の動きがあったのが印象的だった。
慣れていないのかも知れないし好みでは無かったかも知れないのに彼は何も言わなかった
それとは対照的にカレーには「おいしい」と反応を示してくれた
思い返せば今日1日彼から私に話し掛けるばかりで私は…
私は彼をキャラクターとして愛でてハイになって居ただけで
彼の心情等考えていなかった
何処か雲の上の存在で自分とは全く違う生き物の様に考えていたが
彼がいくら無表情だとはいえ今現実に生きる人間なのだ。
自分がもしそんな事をされたなら…同じ様に何時間も何も話さず見詰められたなら
不愉快極まり無い…
それなのに彼は【出来る事なら何でもするよ】と言ったのだ
この世界に置いて彼の只一つの居場所、頼れる人間は…私しか居ない
そんな不安から彼はそう言ったのかもしれない
私はそんな自分に落胆し、そして彼と向き合う事を決意した。
「これって、………………何してるの?早く教えて欲しいんだけど。」
突然に回転した頭は私の動きを停止させていて
表情もつい先程迄の能天気な物では無くなっていたのだろう
「 沙夜子 ?」
至近距離で顔を覗き込む美形に気付かないくらいに