第29章 キッチンでのヒトコマ
3月のある日
テレビで流れるパンケーキを彼はじっと見ていた
その横顔が可愛くて頬をつつきたくなるが止めておく
そう言えば、とキッチンに立つ
(多分ホットケーキミックスあったよな………)
以前買っていたホットケーキミックス
賞味期限はまだまだ先なので作ってみる事にした
「イルミさん!」
「……?」
無言ながら此方を向いて目線だけで疑問をぶつけてくる
「ホットケーキ作りましょう!一緒に!」
「家で作れるの?」
「あんな立派なもんじゃないけど庶民的なホットケーキでも美味しいですよ!」
「そうなんだ」
スルーされるかと思ったが彼はさっと髪を纏めてキッチンにやって来た
バター、玉子、ホットケーキミックス、牛乳を並べる
「始めにバターを溶かします」
自己流だが小皿にバターを適量入れてレンジで溶かす
ボウルに入れたホットケーキミックスに牛乳と溶かしたバターを入れる
「イルミさん卵入れてもらって良いですか?」
「うん」
彼はおもむろに卵を手に持つとそのままボウルに入れた
「っ……!!ちゃうちゃう!」
「?」