第28章 母とのヒトコマ
3月のある晩
私は母に誘われて行き付けのバーで二人飲んでいた
今でこそ滅多に無いが
私が20歳21歳くらいの頃は毎週二人で飲み歩き朝までカラオケに行ったりもしていたのでその頃を思い出して懐かしい
何杯目になるのか解らないカクテルのグラスを傾けた
彼には母と飲むと説明して出て来たが………もう眠っているだろうか
時刻は23時を過ぎている
「あんた正直な話しさ」
「んー?」
「イルミの事どう思ってるん?」
「…………………」
「こんだけ一緒に住んどいて殺される事は無いやろうけど……おらんなるんやで」
「うん」
「正直、好きなん?」
「……好きやなぁ」
「………それは恋愛的に?」
「うん。恋愛的に」
「そっか」
「………うん」
「おらんなるんやで?」
「わかってる」
母が心配気な視線を向けている
「でも好きやねんなぁ………」
「そっか。………向こうは?」
「全然わからん!嫌われては無いと思う」
「うーん。どう思ってるんやろなぁ……せめて両想いやったら良いんやけどな」
「そやなぁ」
「……まぁ好きになったもんはしゃーないわ。何もせんと後悔するより楽しみ!やけ酒はお母さんが付き合ったるから」
「そうやな。……ありがとう。私頑張るわ」