第25章 彼の居ない朝
__________"
彼と並んで夕食
彼が少しでもこの世界で生き易いのならそれが一番では無いだろうか
窮屈な思いを抱えながら過ごしたって楽しい筈が無い
少なからず私はそうだから……
「お仕事応援します!」
「ありがとう」
「でも……これからはちゃんとお仕事の時は教えてくださいね……?今日びっくりしましたからね。」
「伝えるよ」
「ちょっとでもイルミさんが過ごしやすい様になるなら私はそれが良いです!」
素直に笑顔を向ける事が出来たのは
きっと気持ちに嘘が無かったからだろう
「あ」
「……?」
「これ」
「………え」
手渡されたのは茶色の封筒で中身が何なのかは容易に想像出来た
「えっと………これ」
「別に使い途無いから沙夜子が使って」
少し考えた後に
「………私が使うのは忍びないので一緒に出掛けるイルミさんの分に使わせて頂きます。
でも、お仕事するんですから半分は自分のお金として持っといてください。お茶とか買うでしょ?」
「別に」
「じゃないと受け取りません」
「……………はぁ………わかったよ」
こうして私達の生活は少しずつ変わって行くのだろうか
不安な様でいて彼が此方の世界で生き易い環境を整えて行く様は永遠に彼の傍に居られる様な錯覚すらしてしまいそうな……そんな今の幸せを噛み締めて彼の横顔を見詰めた
________"
20:00
「嫌だね。譲らない」
「絶対イッ○Q見るもんっ!!!」
テレビに映っているのは全く興味の無い番組
私はあるバラエティー番組のスペシャルを楽しみにしていてこの時間を待っていたのに
彼はリモコンを譲らないと言う……
「スペシャルなんですよ!」
「どうせ録画してるんでしょ」
「…………はい」
「後で観られるでしょ」
「………はい」
「絶対譲らない」
ド正論で攻められて私は渋々お爺さんとお婆さんのドキュメンタリーを見た
暫くしてテレビから「この緑○青汁を飲んで……」なんて声が聞こえてきて
彼はあからさまにキラキラと瞳を輝かせる
「ねぇ、これ…「買いませんからね」