第25章 彼の居ない朝
「ただいま」
「…!!お帰りなさい!!」
狭い部屋を走って玄関へ駆け寄ると見た事も無い格好をしたイルミさんが立っていた
…………いや、正確には実家では見知った格好だが……
「イルミさn「仕事みつけた」
「……………何の……」
唐突な知らせだが
聞かずとも薄々解った
弟は建築系の仕事をしている
彼の出で立ちは正に建築現場のお兄さんだ
「日雇いで建築現場の土方」
「………何でいきなり……」
「沙夜子にばかり迷惑は掛けたく無いんだよ。」
「迷惑じゃな「沙夜子、俺だって男なんだよ。いつまでもヒモみたいに生活したくない」
「………でも!」
「はぁ………わからず屋だな」
「……………」
「俺は今まで殺ししかした事が無かったけど体力なら自信があるんだ。」
彼は私の身長に合わせて屈み
言い聞かせる様に大きな手を頬に添えて続ける
「それに何時までも部屋でじっとしていたら身体が鈍って戻った時に殺られるのは俺だよ?」
「…………」
「……わかったね?」
真っ直ぐに交わる視線の中私は素直に頷いた
確かにそうかもしれない……家で1日中じっとしていたらいくらトレーニングをしていても勘が鈍ってしまうのでは無いだろうか………
そうなってしまえば危険な事に間違い無い
それに憶測でしか無いが今までとんでもない額を稼いでいたに違いないのに私に頼り生活するのは喪失感すら覚えるものだったのかもしれない