第25章 彼の居ない朝
雛祭りの翌日、日曜日
目覚めるとイルミさんの姿が無かった
「おはようございます」
シンと静まり返る室内……御手洗いにもお風呂にも居ない様だ
「……え、あれ?」
私が起床する迄に彼が外出した事は無かった
いや、今まであったのかもしれないが私が目覚める迄には帰宅していたのかも知れない……
スマホ画面に連絡が来た通知は入っていない
………元の世界へ帰るまでまだまだ時間がある筈だ
彼専用の段ボールを覗いてみる
此方へ来た日に身に付けていた洋服はひっそりと一番底にあった
(…………この服置いては行かんよな……多分)
元旦に射的で彼が取ったスティッ○のぬいぐるみも底の方に押し込められていて渡しそびれていたお守りを思い出す……約一年此方に居るとは言っていたがタイミングは解らないしいきなり居なくなってしまってもおかしくない………
私は底にあった洋服のポケットにお守りをそっと仕舞った
元々彼が帰った後を考えて買った物なので問題無いだろう
(………何処行ったんやろ…)
_________"
時刻は18時24分
夕飯を二人分用意してちゃぶ台に並べた
漠然と寂しさはあるが不思議と彼を失う焦りは無かった
何時もこの時間帯イルミさんが付けているニュース番組を付けてぼーっと眺める
と、不意にガチャガチャと扉の開く音がした