第24章 雛祭りと長男
夕飯を手伝って欲しいと言う母の言葉に和室を後にする間際
「……二人任せて良いですか?」
「うん」
という会話を交わしたが、かれこれ一時間……彼は大丈夫だろうか
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帰宅した父と弟と叔父も交えて宴会状態の居間
お酒も入り良い気分だ
三時間程前
「ご飯できましたよー!」と彼を呼びに行くと片手にミニカーを持ち髪を三つ編みに纏められた出で立ちで二人を連れて居間までやって来たイルミさんは一際異彩を放っていた
あれから従兄妹達に大人気で今も隣をえつじが固めて膝上にはせいらちゃんが陣取っている
えつじが口からジュースを垂らすとティッシュで拭い
「しっかり噛んで食べるんだよ」
なんて注意をしている
普段より生き生きとしている彼のお兄ちゃんスキルに親戚一同感心して止まなかった
22時頃、従兄妹達が眠っている隙に私達は実家を後にした
「イルミさん疲れました?」
「全然」
「すごい好かれ様でしたね~」
「そうだね」
「イルミさんはほんまに長男気質なんですね」
「沙夜子も長女なんだなと思ったよ」
自身に思い当たる節は無いがイルミさんがそう感じたならそうなのかもしれない
ほんの少しの共通点と彼の新たな一面に心が温かくなる1日だった
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「ぐふっ!…………ふふふ………」
「……うるさいよ」
深夜一時
私は床についてから何度目かの思い出し笑いをする
せいらちゃんとオママゴトをしていたイルミさんはお姉さん役を命じられ
髪を三つ編みにされてスカートに見立ててタオルを巻かれずっと熊のぬいぐるみを抱っこさせられていた
「やだわ…私学校行きたくないもん」なんてオネェ口調で淡々と話している姿が何時までも脳裏に焼き付いて離れなかった