第23章 休日のヒトコマ
「面白かったですか?」
「普通」
「そうですか」
彼の興味はよく分からない
この間は真剣に料理番組を見ていたしその前はバラエティー番組だった
然程情報を得る事も無くなった事で色々な事柄にやっと目が向いてきたのかもしれない
暫くテレビを見ていたがそろそろ夕飯を作ろうと思い立ち空のカップを両手にキッチンに立つ
献立を考えていると不意に実家から貰ったお餅を大量に冷凍していた事を思い出した
(…………でも夕飯って感じじゃないよなぁ……夕飯で通すか………)
とりあえず雑煮を作り
トースターを彼にちゃぶ台にセットしてもらい大量のお餅を彼に手渡した
「なにこれ」
「夕飯です」
「………これが?」
「……はい」
「冷たくて硬いけど」
「トースターで焼くのでとりあえず持って行っててください」
私は小皿数枚と調味料を手に所定位置に着いた
次々トースターで焼いて行く
徐々に膨らむ餅をじっと見る彼は動物的な可愛さがある
(窓の外眺めてる猫みたい…………可愛い………)
「イルミさん、これ付けてお餅食べます」
小皿には醤油、一味醤油、砂糖醤油
「好きなん選んで食べてください。熱いから気を付けて!」
「うん」
先ずノーマルなお醤油で餅を食べる彼
ミョーンと綺麗に伸びた事におっかなびっくり食べている………可愛い
以前実家でお雑煮を食べた事を覚えていた様でそれと同じ食べ物かと聞かれて、そうですと答えるとじっと餅を眺めていた
「あと、毎年お餅喉に詰まらせて亡くなる方がいらっしゃるから注意して噛んでくださいね」
「俺より沙夜子の方が餅で死にそう」
「日本人歴イルミさんより先輩なんですよ!なめんといてください」
全ての調味料を試した結果イルミさんは一味醤油がお気に召したようだったがラスト1つは砂糖醤油でデザートの様に食べるイルミさんにほっこりした
そして驚いた事にまさか全て無くなるとは思ってもいなかった35個のお餅は綺麗さっぱり無くなった
一緒に暮らしてわかった事はイルミさんは結構大食いだという事だ
スレンダーなあの身体の何処に約30個程のお餅が消えたのか……不思議である