第23章 休日のヒトコマ
2月のとある休日
イルミさんと住み始めてから外出の機会は増えたが、かと言って休日の度に何処かへ出向いている訳でもない
久々にゆっくりと好きなだけ惰眠を貪り昼頃起床した
アラームの音を聞かない目覚めはいつの時も幸福を感じる
伸びと共に長い欠伸を漏らす
上体を起こして居間を見ればイルミさんは読書に勤しんでいた
朝のうちにトレーニングは済ませたのだろう
……しかし彼は本当に静かだ
物音も立てないし私が眠っているとテレビも付けないという事にも気が付いて、見ても良いと伝えたのだがそれでもテレビを見ていた様子は無かった
「おはようございます」
「おはよ」
彼はすっかり漢字をマスターし、私よりも高度な漢字までスラスラ読める程になっていた
もうドリルに向き合う彼を見れないのは寂しいが彼の努力には本当に感心するばかりだ
「朝ごはん食べました?」
「うん」
私の起きない朝は食パンをトースターで焼いて食べてもらっている
トースターの使い方もすぐに習得してくれ、生活スタイルも私のルールを破らず順応性の高さに驚かされっぱなしである
「……今日は何処か出掛けるんですか?」
平日は基本的にバラバラな為お互いの予定は前日に伝えておくか、メールで報告をするが休日の予定は二人で外出する以外特に伝え合っていない
「別に。沙夜子は?」
「家に引きこもり予定です」
「そう」
私はいそいそと布団を畳みイルミさんは読書に戻る
(……掃除するか)
私は携帯で好きな楽曲を流しながらトイレとお風呂、洗面の掃除を済ませて
布団を日乾しする事にした
冬布団は重い………
「…………すみません、イルミさん手伝って」
抱えていた布団が一気に軽くなる
イルミさんは軽々と布団をベランダに運んでくれた
「ありがとうございます!」
「俺の布団でもあるしね」
こんな時男手があると助かるものだ
続いて掃除機をかける
イルミさんは本を片手に邪魔に成らぬ様に部屋中をうろうろする
拭き掃除も済ませて部屋はピカピカだ
気が付くと夕方前
一息付いてコーヒーとココアを用意して並んでテレビを見る
「何読んでたんですか?」
「これ」
図書館のラベルの付いた本の表紙には【人工知能の今後】と書かれていた
私は更々興味も無い上に小難しい雰囲気の本だ