第22章 犯人とのヒトコマ
昨日買った味噌汁用の豆腐が消えている事から現場で無惨にも針を刺されて殺害された豆腐は私のお気に入りの絹ごし豆腐で間違い無いようだ
…………しかし、犯人の動機が解らない
(!!!)
誕生日か………?!さりげなく誕生日ケーキに見立てて私にアピールをしているのか……?
犯人の誕生日を私は確かに知らないが其を私にアピールして何になるというのだろう
勿論全力で祝うが……実はとっても寂しがりやさんで気付いて欲しかったという線は無いだろうか……
色々な推理が私の頭を錯綜する事30分
犯人が帰宅した
「お帰りなさい」
「ただいま」
私はまず探偵らしく彼の様子を伺う
が、彼は豆腐には一切触れずにテレビを付けて座椅子に座った
まさかノータッチでテレビを付けるとは思いもしなかった
流石は殺し屋といった所か……被害者に目もくれない辺りやはりプロだ
仕方がない……そちらがその気なら誘導尋問と洒落込もうじゃないか……
「イルミさん……お豆腐……」
被害者の名前を直接出してみる
「うん」
…………うん………だと?
普通なら「あ、お豆腐なぁ~」なんて自身の仕出かした所行を説明するものじゃないのか……?
(………探偵ごっこしてても埒開かんわ…)
「イルミさん……何で豆腐に針刺してるんですか」
「え、沙夜子知らないの?日本の文化だけど」
(し……知らねぇぇ………………………。何それ、どんな文化……………)
私は直ぐにGo○gle先生に聞いた
【針供養(2月8日)】
使うことができなくなった針を供養する日だそうで関西、九州地方では12月8日が一般的だが関東では2月8日が一般的
針は豆腐やこんにゃくに刺して供養するらしい
洋裁関係の企業さん達には未だに残っている文化だとか………
(………………すまん。知らん…………)
「イルミさん日にち違いますけど」
「……沙夜子が教えてくれないから遅れたんでしょ」
「…………」
少しプンプンするイルミさんを見詰めつつ
"開催するのはお寺や神社だそうですよ"
という言葉を飲み込み
針の刺さった豆腐を静かに捨てた