第5章 ~裏切り〜
私も妊娠していたらいいのになんて思ったんだ。透さんが私に振り向いてくれる様な気がして。でも、咲璃愛の寂しそうな顔を見て、それは間違いだったということに気が付いた。普通なら二人分の愛を貰える筈なのに、私の1人だけの愛情では、子供が可哀想だと思ったからだ。
『沖矢さんにも、ちゃんと説明しなきゃだね。』
咲「うん。ちょっと怖いけど。でもちゃんと伝える。」
不安もある筈なのに、咲璃愛は強いと思う。昔からだけど、度胸はあるし、姉御肌だったから。
『私もちゃんと話すよ。透さんに。あと、さっき沖矢さんから聞いたんだけど、透さんと沖矢さん、知り合いみたいだよ。この間コンビニでも凄い剣幕だったじゃん?あの2人。』
咲「そうなの?あの時、ほんとに怖かったもんね。」
『うん。でも、透さんが沖矢さんの事を一方的に嫌ってるだけらしいんだ。』
咲「年下を嫌うなんて、沖矢さん何をしたのかな。」
『さぁね。私が知らなくていい事だって言われたし。そういうのも含めて、透さんに全部聞くよ。』
咲「そうしな!私は明日大学休んで、病院行くから!もう寝よう。おやすみ〜。」
咲璃愛が自分のベッドに入る。私は来客用の布団に転がり、電気を消した────。
のはいいが、眠れない。先程、咲璃愛の顔を覗き込むと寝息をたてて、眠っていた。透さんから連絡が来ていないかと思って、携帯を見る。透さんからは何も連絡は来ていなかった。メールの受信ボックスに一つだけ、未読のメッセージが届いていた。不明な発信者。見たことの無いメールアドレスからだった。
?〈今日は、すみませんでした。事情があって、あの女の人に真恋音さんを紹介できなかった。色々みてしまったからには、真恋音さんに話したいことがある。直接話したいから、空いている日を教えてください。降谷〉
『降谷って、透さん...だよね。名前を変えないといけない理由があったのかな。』
《明日にでも是非お話したいです。私も話したいことがたっくさんあるので。夜に私の家へ来て下さい。》
送信っと。怒った感じで絵文字も何一つ添えなかった。それからは返信も何も来なかった。出来ないの方が正しいのかもしれないけれど。色々と考えながら、私は眠りについた。