第5章 ~裏切り〜
『沖矢さんに何が分かると言うんですか。』
昴「わかりますよ、彼、安室透は嘗ては僕の仲間でしたから、今でこそ一方的に恨まれていますがねぇ。」
仲間?今は恨まれてる?もう誰を信じれば良いのか分からなくなってきた。
昴「私も推理をするのが好きですが、その女の人は彼女ではないと思いますよ。それよりもっと深い、何か事情があると思いますね。」
『透さんが、私に隠し事しているんですかね。』
昴「直接聞くのが一番だと思いますよ。さぁ、私はもう帰りますね。真恋音さんが来るまで家に居ろとの、命令でしたので。」
『そうなんですね、引き止めてしまってごめんなさい。』
私は沖矢さんを見送りに玄関先まで来た。
昴「では、おやすみなさい。咲璃愛さんにも伝えておいて下さい。おやすみ、と。」
『はい!じゃあ、おやすみなさい。沖矢さん。』
扉がしまったのを確認して、鍵を閉め、リビングへ戻る。咲璃愛が丁度お風呂から上がってきていた。
咲「家に来たの久しぶりだね。最近は安室さんとばっかりだもん。寂しいなぁ。」
『私も咲璃愛に会いたかったよ。沖矢さんが、咲璃愛におやすみって伝えておいてってさ。』
笑顔を無理に作る。さっきから作り笑いしか出来ないのだ。それもこれも透さんのせいで。
咲「あんまり、無理しなくて良いよ、辛かったね。」
と言って、咲璃愛は私を抱きしめた。
『うん。沖矢さんにも助言してもらったから、大丈夫。透さんに直接聞くよ。』
咲「そうか、そうか。真恋音も強くなったね。それでね、私も真恋音に報告があります。」
『な、なに?改まって。まさか...!』
私はふとある事を思い出す。
咲「そう、そのまさかです。さっきお風呂入る前にトイレ行ってさ、検査薬使ったんだけど、陽性でした。」
『え、うそ!?おめでとう!でも、どうするの?』
咲「そこなんだよなぁ、まだ病院に行かないと本当かどうかも分からないし、それに、昴さんとの壁を感じる。これ以上は踏み込んで来るなって言われてる感じがして、過去の事何も教えてくれないの。」
『そう、なんだ。産むなって言われたらどうするの?』
咲「そんな事言わないよ。絶対に。ただ、心から愛してくれないだけだもん。」
と、寂しそうに、咲璃愛は呟いた。